バイト代で修復を3詰みできる予定でした
命あっての人生ですよね。今すごく実感しています。
上野戦争に参加したものの、絶賛先生と暗闇の中を敗走中です。先生は「討幕なんて一過性のブームだろ」や「俺には勝ち馬に乗る才能がある」だの参加理由はそんな感じだったが、おそらく一番の決めては彰義隊の響きが気に入っただけでしょう。誘う友達がいないから私を誘うのもどうかと思うが、ついてきた私も私だ。
雨の中、とにかく移動を続ける。新政府軍に見つかろうもんなら、ひどい目に遭うことは目に見えている。こんな闇バイト参加するんじゃなかった。いくらお金に目がくらんでしまったとはいえ、死んでしまったらもともこもない。ちなみに先生は敗走が決まってからはダンマリだ。先生に山ほど文句は云いたいが、今は逃げるのが先だ。
根岸を経由して先生の地元千住方面に逃げられればやりようはありそうだが、残党狩りがあまりにもしつこすぎる。このままでは捕まるのも時間の問題だろう。そんなことを考えていた時、先生は急に立ち止まり。道端の泥だまりを見つめていた。すると先生は泥だまり飛込み。穴掘りを始めた。遊んでいる場合じゃないですよとツッコミを入れようとしたとき、先生の意図が掴めた。穴を掘ってそこに隠れようとしている。先生が見つけたこの泥だまりは緩い地盤で簡単に手で穴が掘れる。人が隠れるほどの穴が追手が来るまでのわずかな時間で堀切れるかどうかはわからないが、やるしかない。敵方もまさか土遁使いが相手だとは思うまい。ひたすら手ですくいながら泥だまりの穴を広げていく。あと何分で敵が追いつくかは賭けであるが、先生の土いじりは伊達ではない。追手の松明の明かりが近づいてきて焦りが半端ない。先生が手を止めて今20㎝程掘った泥だまりに寝そべり始めた。若干腹部が盛り上がりがあるが、夜ならぱっと見で気づけないか?先生の真似をして先生の真横に体を縮めて寝そべる。足跡が近づいてきたことを感じて、覚悟を決めて息を止めて泥の中に潜る。泥の中に潜る不快感に堪えながら、必死に息を止める。体感時間では何分だったか分からないが、息継ぎのため水面に上がる。恐る恐るあたりを見渡しひとまず追ってをやり過ごしたことを確認する。
先生も上体を起こし、周りを見渡す遠方には複数の松明の明かりが動いており、それを確認すると再び穴掘りを進める。それを真似して私も作業を続ける。
それから何回も泥に潜り追手を何時間もやり過ごし、泥だまりから移動できたのは明朝になってからだ。そこから2時間ほど歩き先生の工房にたどり着いた。
緊張感がほぐれてどっと疲れが出てきた。先生は急にたくさんのことを語り始めた。
彰義隊への愚痴から、自らの機転で追手をやり過ごしたこと、少し話を盛った敵側の間抜けな行動など。先生のせいで巻き込まれた出来事であったが、先生んおかげで生きながらえた。私は聞き流しつつ「てか土遁を使えるなら、どうして戦中で使用しなかったのですか?」聞いてみた。
「未来で決めたのに…」
と先生は呟いた。本番には弱いタイプのようだ。
やめよう闇バイト。