憂鬱な上期テスト直前の放課後
私は工房の居間にあるソファーで仰向けに寝転び、アイマスクをした状態でヘッドフォンから流れる音声に耳を傾けている。聴いているのはロボ子さんのASMRボイス。全神経でASMRを楽しむために最高の体勢で全集中している。
今日のASMRは溺愛お姉さんボイスだ。なんて自己肯定感の上がるASMRなんだろう。現代社会のストレスを耐えきるにはもはや必需品だ。ASMRを聴いたことない人は人生の半分損していると断言できる。このちょっと低いお姉さん感がたまんない。耳が幸せ。
ASMRに全集中していたが、工房に誰かが入る物音を感じ、ノイズ不快感。おそらく先生だろう。この前、私のASMR中を邪魔してガチギレしたので、今回は学習している知能に期待する。
ロボ子さんの寝息を真横に感じながら、連発される「スキ♡」に脳みそが解けていく。
私もロボ子さん逢えてよかった。いっぱかまってあげたい。毎日逢いに行きます//
ヘットフォンから流れる幸せな声に癒される一方で、僅かにヘットフォンの外から聞こえるノイズが逆に気になる。私がASMRに全集中しているのが見えるなら先生は今すぐ工房から出て行って欲しいところだが、ここは先生の工房なので我儘はほどほどにする。気を使って物音を立てないように動いている様子だが、逆に気になるので腹が立つ。そもそも動くなよ。
ASMRが終わり、スパチャ読みタイムに突入。人のスパチャ読みですら私にとっては癒し。スパチャ読みASMRも最高です。もっとキスされたいので誰か赤スパ送れと願う。ネコの毛が口に入って可愛い。何しても可愛い。ろぼさーに寄り添ってて可愛い。先生は冷蔵庫開けるな。あとお菓子食べるのヤメロ。おまえのASMRは望んでない。誕生日じゃないけど私もロボ子さんに誕生日おめでとうと云われたい。学生の私は常に金欠なのでスパチャを貢ぐ経済的な余裕は無いので他力本願なスパチャに期待する。やっぱロボ子さんしか出せない雰囲気がたまらんよな。このちょっと隙のあるお姉さん感がたまんねぇよな~、世界はもっと認知すべきだろ。最近は長風呂なんなだね。先生は貧乏ゆすりやめてください、不快です。
もうすぐASMRが終わってしまう...
明日も配信見ます。EDを名残惜しく聴きながら、私はアイマスクを取り外す。ソファーから起き上がり、先生と目が合う。気まずそうな困り顔をしている。私はまだ現実世界の同期中でフリーズ状態で先生を見つめる。気まずさに耐えきなかった先生が雑談を始める。話が全く入ってこない。もう隣でロボ子さんが寝ていないことが、ここが現実なのだと認識せざるを得ない。彼女が隣で寝ていたぬくもりが冷めていくのを感じ、「どうして世界はこんなに冷たいのですか」と寝ぼけた頭で呟く。それに反応した先生が諭すように教えてくれた。
「梅雨入りしそうって条件見逃してるぞ」
そうですか。